イベント情報

日本医学交流協会医療団では、健康や医療に関する
市民向けの公開講座を毎年開催しております。 ぜひご参加下さい。

第12回公開講座 市民健康の集い  特別講演「子どもの食物アレルギー」


食事指導と治療法


食事の指導の話に移りましょう。基本的にはタンパク質が原因なので、タンパク質含有量を目安にすると食事指導もしやすいです。
経口免疫寛容を考えると、不必要な除去は極力避けた方がいいですし、子どもは徐々に消化機能が発達してくるので、半年たてば状況はかなり変わってきます。
ずっと除去するのではなく、本当に今の現時点での除去が必要なのかを定期的に評価していく必要があると思います。何となく除去していくと、除去する食べ物が増えていく結果になるのでよくないです。
安全性の確保という点でいうと、どれだけ頑張って除去をしてもどうしても誤食は起こってしまうのが現状で、特に家庭では加工食品の表示を見落としたり表示自体の理解が不足していることが多いので、表示の約束事をしっかり理解して見落とさないようにしたいものです。
加工食品はその時々で内容が少しずつ変わることがありますし、同じ食パンでも牛乳の含有量は銘柄によって違うので、そこにも注意する必要があります。


ただ、なかなかご家庭だけでそういった判断をしていくのは難しいと思うので、専門の先生からアドバイスを受けながらやった方がいいですね。
先ほど述べたように乳幼児の食物アレルギーは7割方は治りますが、残り2〜3割は学童期になっても治りません。ただ、そういう人も経口免疫寛容を意識して、家庭で症状が出現しない量から摂取をし始めて、階段を上がるようにゆっくり増やしていくことで、半年から1年後には症状なく食べられるようになれるということが分かってきました。この方法は「経口免疫療法」と呼ばれるものです。


もっと微量でも強い症状が出る人は、1カ月くらい入院してどんどん負荷をかけて食べられるようにする「急速法」という治療法を選択する場合もあります。ただ問題点としては食べられるようになったらおしまいではなく、その後も継続的に食べ続けないとその状態を維持できないということが挙げられます。
また、継続して摂取している期間でも体調が悪かったりすると症状が出てしまうこともあり得るので、治療したからといって完治するわけではないというところも問題点です。


経口免疫療法は治療法としては標準的なものではなく、今はまだ研究的に行われている段階なので、専門施設のみで行われています。自己判断で勝手に家でやるのは危険なので絶対にやらないようにしてほしいです。
このように、この10年ほどで食物アレルギーの世界は考え方が180度に近いくらい劇的に変わりました。
食物アレルギーのお子さんと接するためには、周りの方が正しい認識を持っていないと間違った方向に進みかねないので、正しい知識をもって導いてあげることが大切だと思いますし、患者さん(子ども)の安全と生活の質を考えてアレルギーと上手に付き合っていくことが大事だと思います。

 

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特別講演終了後、津曲俊太郎氏、内野美恵氏、金子桂子氏の3氏によるトークショーが行われました。


トークショーは金子氏の司会進行で進められ、司会進行役の金子氏ご自身の食物アレルギー体験を踏まえての質問や、
内野氏から「食物アレルギーの子供が増加している原因」等について津曲氏に質問がありました。
また、参加者からは「園児への給食の提供について」のほか、「緊急時の対応」の質問等があり、各先生方からそれぞれの立場からの意見が述べられました。トークショーでは、参加した先生方からお互いに質問が出るなど和やかな雰囲気の中で進行、終了しました。

トークショー参加者
金子桂子氏(左)「コンサドールズ」・プロデューサー
津曲俊太郎氏(中)神奈川県立こども医療センターアレルギー科
内野美恵氏(右)東京家政大学ヒューマンライフ支援センター・准教授

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