イベント情報

日本医学交流協会医療団では、健康や医療に関する
市民向けの公開講座を毎年開催しております。 ぜひご参加下さい。

第12回公開講座 市民健康の集い  特別講演「子どもの食物アレルギー」


食物アレルギーの傾向と診断


では、それでも食物アレルギーを発症してしまった子はどうすればよいでしょうか?食物アレルギーにはどのような傾向があるのか考えてみましょう。
まず、年齢別にみると患者数が圧倒的に多いのが乳幼児(0〜1歳くらい)で、食品としては鶏卵・牛乳・小麦がほとんどを占めています。ただ、この時期の食物アレルギーは成長とともに状況はかなり変化するので、赤ちゃんの時にアレルギーがあるからといって全員がその後もずっと食べられないわけでは全然ないということです。半年たてば体質は変化してきますし、7割程度の子は自然に治っていくともいわれています。
一方で学童期以降に多いピーナツ・蕎麦・甲殻類などに関しては自然治癒の可能性が低いといわれています。なぜこのような違いがあるのかはまだ解明されていないのですが、食物アレルギー児を対応するにあたってはこのような違いを把握しておくことも必要でしょう。


次に診断の話をします。診断では、何をどのくらい食べたら症状が出て、どのくらいたってから症状が出たのかという時間の情報などが大切になってきます。
本当にアレルギー症状なのか疑わしい場合は同じ物を食べてみて同じように症状が出るかどうかという再現性も大切です。ここで強調したいのは、「血液検査だけで食物アレルギーかどうかは判断できない」ということです。


アレルギー検査で血液検査を行う場合、基本的にはIgE抗体が血液中にどれくらいあるかを調べていますが、実際は検査が陽性でも食べても何ともない人はいますし、反対に陰性でも食べたら症状が出てしまう人もいるということです。血液検査の他にも皮膚検査などもありますが、いずれの検査も基本的には診断を補助するという位置付けであり検査のみで全てを判断するものではありません。
はっきりしないときは実際食べて反応を見る検査が一番確実なのですが、多少のリスクは伴います。ですから、症状が出る確率が高い人は基本的には病院の専門施設で負荷試験を行うことが望ましいです。
病院選びは悩むと思いますが、一つの方法として食物アレルギー研究会のウェブサイトを参考にするのがよいかもしれません。こちらのウェブサイトには、食物経口負荷試験実施施設一覧が掲載されています。近所で負荷試験をたくさん行っているところを探してみるとよいでしょう。




症状が出た場合の対応


次に食物アレルギーの症状の話ですが、やはり食物アレルギー児と関わるには症状が出てしまった時の対応も理解しておく必要があります。食物アレルギーの症状は本当にたくさんのものがあり、体のあらゆる場所に出る可能性があります。一般的には皮膚の症状で、かゆくなったり赤くなったり、じんましんが出たりすることが多いです。
ただ、咳が出たり、ゼーゼーヒューヒューしたりするなどの呼吸の症状が出るときや、吐いたりおなかが強く痛んだりするときは注意が必要です。また、血圧が下がって意識がもうろうとしたり、顔色が悪くなってぐったりしたりするときは緊急的な対応が必要になってきます。
また、過去の症状がじんましんだけだったからといって毎回同じ症状しか出ないとは限らないので、一般的な知識として食物アレルギーではどういう症状が出る可能性があるのか把握しておくことが大切です。


アレルギー症状を把握できたら次はその症状に対しての対応が必要になりますが、医療機関に行く前にできることを整理しておきましょう。
まずよく使われるのが抗ヒスタミン薬です。飲み薬で持たされていることが多いと思います。皮膚のかゆみやじんましんを和らげる働きがあり、だいたい30分くらいで効いてきます。呼吸の症状が出やすい人は吸入のお薬も出されます。
そして緊急時に使う薬としてエピペンがあります。自己注射の薬で、すごく即効性が高くてかなり強い効果があります。基本的には全てのアレルギー症状に効果があるのですが、即効性がある分、5〜10分で効果が切れてくるので、エピペンを使って症状が引いたとしても、また症状がぶり返す可能性があります。エピペンは使ったらすぐに救急車を呼んで、必ず医療機関に行くようにしてください。

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